TREATの箱山です。
ここまでのPart1、Part2のブログでは、暑熱順化についてと深部体温を指標として行うトレーニング法について書きました。
暑熱順化を行うには、ヒートトレーニングゾーンの温度域でトレーニングを行うことが大切であると説明しました。
今回のブログでは、運動中に深部体温の上昇を抑えるために有効な冷却戦略について書いていきます。
外部冷却法と内部冷却法、冷却のタイミング
深部体温の上昇を抑えたり、下げていくための方法として身体の外部から冷却する方法と内部から冷却する方法があります。
外部冷却法には、アイスバスやクーリングベスト、アイスパックなど冷たいものを身につけたりすることで冷やしたり、頭頸部や腋下、手掌など身体の一部分を冷やして冷却する方法があります。
内部冷却法にはアイススラリーや水分補給など冷たいものを摂取することで身体の内部から深部体温を下げようとするものがあります。
冷却を行うタイミングによって目的も異なってきます。
運動前に行う場合は、深部体温をあらかじめ下げておくことで運動中の上昇を抑える目的があります。
ただ、運動前の過度な冷却はパフォーマンスを妨げる可能性があるため注意が必要です。
運動中の行う場合は、運動中の深部体温の上昇によるパフォーマンスの低下を防ぐ目的があります。
運動後の冷却は主にコンディショニングの目的があります。
(日本スポーツ協会のHPでわかりやすく動画で解説されています。ぜひご覧ください。)
今回は運動中に実施可能なアイススラリーと手掌前腕冷却についてそれぞれ書いていきます。
アイススラリー
アイススラリーとは、液体と細かく砕いた微小な氷を混ぜ合わせたシャーベット状の飲み物です。
通常の飲料よりも体内で熱を吸収するため冷却に優れていると言われています。
アイススラリーを運動前や運動中に摂取することで深部体温の上昇を抑えたり下げることができると言われています。
”運動前の摂取であれば、体重 1kg あたり7.5g(60kg の選手であれば 450g)をこまめに摂取すると十分な深部体温の低下が認められています。また、 深部体温はアイススラリーをウォーミングアップ(W-up)前よりも後に摂取すると低下が大きく、持久性運動パフォーマンスに対しても有効であることが報告されています 。
競技中に給水ができる競技では運動中に、競技中に休憩が設けられている競技で はその休憩中に、アイススラリー摂取をすることができます。摂取量は、休憩ごとに体 重 1kg あたり1.25g(60kg の選手であれば 75g)を摂取すると、運動後半の深部体 温の上昇を抑制することが報告されています。”
アイススラリーを目的とした商品が発売されていますが、自作することもできます。
ミキサーなどにスポーツドリンクと氷を入れて混ぜ合わせて保冷ボトルなどに入れて運動中に摂取することができます。
アイススラリーには深部体温の過度な上昇を抑えるというメリットもありますが、冷たいものを摂取するため胃腸の不快感やお腹を下してしまう可能性があります。
実践的に取り入れていくには摂取するための練習が必要であると言えます。
まずは普段の練習で取り入れてみるといいと思います。
ランニング中にはコンビニなどで購入できるもので、アイススラリーの代わりになるようなものを摂取することも一つの方法だと思います。
手掌前腕冷却
手のひらには動脈と静脈が直接連絡している動静脈吻合という血管があります。
身体の表面ではより多くの血液がこの動静脈吻合を通過するため、この部分を冷やすことによって冷却された血液が身体の深部に戻っていくことにより体が冷却されます。
具体的な方法は運動間に前腕から手のひらにかけて10℃〜15℃の水に10分間浸水することで深部温度を下げる効果があると言われています。
バケツなどで冷やす場合は冷却中に水温が高くなってしまうので調整が必要です。
冷たすぎると血管が収縮してしまい冷却効果が減ってしまうので注意が必要です。
ランニング中で休憩することが難しい場合には、手のひらをアイスパック等で冷やしながら走ることも効果的かもしれませんが、浸水した状態が最も冷却効果が高いと言われています。
手のひらを冷却することを目的とした商品も発売されています。
いずれも10℃〜15℃で10分程度の冷却が良いとされているので、冷たすぎたり、過度な冷却は避けた方が良いでしょう。
効果的に冷却をするためには片手ではなく両手での冷却が良いとされています。
効率的に冷却するには組み合わせることが有効
身体を冷却する方法として外部冷却法と内部冷却法からそれぞれアイススラリーと手掌前腕冷却をご紹介しました。
より効率的に身体を冷却するにはこれらの方法をうまく組み合わせていくことが有効と言えます。
いずれも練習の中で色々と試していくことで取り入れやすい方法を見つけていくのがいいと思います。
今回は運動前や運動中に深部温度の上昇を抑える冷却戦略について書いていきました。
夏の暑い時期など深部体温の上昇を抑えていくことでパフォーマンスの低下を防いだり、熱中症を予防しながらトレーニングしていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
【参考】